答:取締役会の専決事項はできません。専決事項以外については、(決議事項に応じて)定款の定め又は取締役会の決議(それに基づく規程を含む。)により、授権することができます。
解説
会社法上、取締役会には、会社の経営事項全般について広く決定権限が与えられていると考えられ、取締役会の決議事項は、①取締役会の専決事項(会社法362条2項3号、4項等)、②それ以外の法定事項、③その他の一般の業務執行の決定(会社法362条2項1号)、に分類することができます。
そして、①については、専決事項とされている以上、常務会・代表取締役等の下位機関への授権は(取締役会の決議や定款の定めによっても)できないと考えられています。専決事項には、会社法362条4項に列挙されている事項その他の「重要な業務執行の決定」が含まれます(が、これらに限られるものではありません)。
②の専決事項以外の法定事項については、会社法上「定款の別段の定め」による例外を認めている場合には、定款の定めにより常務会・代表取締役等の下位機関への授権ができます。例えば、募集株式(譲渡制限株式)の割当て決議は、取締役会設置会社にあっては取締役会の決議事項とされていますが(会社法204条2項)、「定款の別段の定め」により常務会・代表取締役等の下位機関の決議事項とすることができます(会社法204条2項ただし書)。
③のその他の一般の業務執行の決定(会社法362条2項1号)については、常務会・代表取締役等の下位機関への授権ができます。このうち、日常的な業務執行の決定については、取締役会による授権がなくとも代表取締役等に権限あることが推定されるとする考えもありますが、会社法362条2項1号が「業務執行の決定」を取締役会の職務と明記している以上、実務上は、取締役会の決議や当該決議に基づき制定される決裁規程等による授権を得ておくことが適切であると考えられます。
この点、「重要な業務執行の決定」「重要な財産の処分及び譲受け」は①で常務会・代表取締役等への授権不可、「重要ではない」業務執行の決定、「重要ではない」財産の処分及び譲受けは③で常務会・代表取締役等への授権可となる等、①と③の区分が不明確な部分があることから、実務上は、両者の区分を運用上明確にするために、特に大きい会社では、取締役会の付議基準や決裁規程等を定める会社が多くみられます。