答:発行する株式が譲渡制限株式の場合は法文上必要です。譲渡制限株式以外の場合も実務上は取得することが適切です。
解説
平成26年改正前は、総数引受契約を締結するにあたり、取締役会決議が必要か否かについて議論がありました。
しかし、平成26年改正により、発行する株式が譲渡制限株式の場合は、取締役会決議によって総数引受契約の承認を受ける必要がある旨が明確にされました(会社法205条2項)。なお、取締役会非設置会社においては、株主総会特別決議が必要になります(会社法205条2項、309条2項5号)。
従って、発行する株式が譲渡制限株式の場合は法文上取締役会決議が必要です。
一方、発行する株式が譲渡制限株式以外の場合については、引き続き会社法上は定めがありません。なお、譲渡制限株式以外の株式がある会社は公開会社になりますので(会社法2条5号参照)、これは公開会社における問題になります。
この点、会社法上の定めがなく、会社法205条2項は譲渡制限株式に限定して取締役会決議を要求していることから、発行する株式が譲渡制限株式以外の場合には、取締役会決議は不要とする考えもあります。
しかし、総数引受契約の締結も会社の「業務執行の決定」(会社法362条1項1号)に該当すると考えられますので、取締役会の決定を取得しておくことが実務上は適切である考えます。
なお、これは会社法204条2項における株式の割当の決定においても同様にあてはまると考えられます。