答:考え方が分かれますが、実務上は、定足数に影響ない限り、特別利害関係取締役になる前提で処理することが適切です。
解説
会社法369条2項の「特別の利害関係」とは、「特定の取締役が、当該決議について、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係」などと説明されます。
この点、会社(A)とその取締役(X)個人との利益相反取引について、会社(A)の取締役会で審議・採決する場合に、その取締役(X)が特別利害関係取締役にあたることは疑いありません。
また、会社(A)とその取締役(X)が「代表」する会社(B)との利益相反取引について、会社(A)の取締役会で審議・採決する場合に、会社(A)の取締役会で審議・採決する場合に、その取締役(X)が特別利害関係取締役にあたることもほぼ異論はありません。
しかし、会社(A)とその取締役(X)が代表権のない常務取締役等を務める会社(B)との利益相反取引について、会社(A)の取締役会で審議・採決する場合に、その取締役(X)が特別利害関係取締役にあたるかどうかについて考えが分かれています。
この点、会社法365条1項、356条1項の利益相反取引にあたる場合には、①その相手方である取締役個人又は②その取引の相手方である会社の取締役、は特別利害関係取締役に該当すると考え、利益相反取引にあたらない場合には、①②の取締役も特別利害関係取締役に該当しないという考えがあります。
そして、②について、利益相反取引にあたるのは、自社の取締役がその取引の相手方である会社を「代表する」場合なので、その場合の取締役は特別利害関係取締役に該当し、自社の取締役がその取引の相手方である会社を「代表しない」場合は特別利害関係取締役に該当しないことになります。
しかし、冒頭の「特定の取締役が、当該決議について、会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係」は、自社の取締役がその取引の相手方である会社を「代表しない」場合もありえ、実務上はむしろそのような場合が多いように思われます。
例えば、株主(a)と会社(b)との取引について、会社(b)の取締役会で審議・採決する場合に、株主(a)から会社(b)に派遣されている取締役(x)が、株主(a)では代表権ない取締役であった場合でも、会社(b)の取締役会において取締役(x)が株主(a)の利益という「会社(b)外の利害関係」を無視して「会社(b)に対する忠実義務を誠実に履行すること」は「定型的に困難」であるのが通常であるように思われます。
従って、このような場合には、定足数に影響がない限り、特別利害関係取締役になる前提で処理することが適切です。
なお、JV案件等派遣取締役が議決権行使しないことについて問題がある場合には、株主総会への授権、拒否権付種類株式の発行、株主間契約における手当て等の対応が必要になります。