答:全員に共通の利害関係がある場合には、それぞれに「特別な」利害関係はないとして取締役全員が審議・採決に参加できると考えられます。ただし、そのような場面は限定的と考えられます。
解説
ある決議事項について全ての取締役が共通の利害関係を有する場合には、それぞれに「特別な」利害関係を有する取締役はいないことから、取締役の審議・採決に参加できると考えられます。
ただし、このように全ての取締役が共通の利害関係を有する場合は、全ての取締役に同じ約款が適用されるD&O保険を全取締役に同時に付保する場合等適用される場面は限定的と考えられます。
全取締役に株式やストックオプションを発行する場合や全取締役と補償契約を締結する場合であっても、仮に発行要領や契約内容が同じだとしても、取締役毎に利害状況は異なり得ることから、議案を各取締役毎に分けて、各議案の対象となる取締役を審議・採決から除外して決議することが適切である場合が多いと考えられます。
そこで、ある決議事項につき全員に共通の利害関係があると思われる場合であっても、実務上は、取締役毎に議案を分けることの可否と各取締役の利害状況を勘案のうえで、全ての取締役が共通の利害関係を有するかを慎重に見極めたうえで、全取締役につき一つの議案で審議・採決をすることの要否と適否を検討するべきと考えられます。