中小会社のための会社法備忘録
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会社法上、組織再編・減資等の場合に「債権者保護手続き」として、1ヵ月以上の債権者異議申述期間を定める必要がありますが、「1ヵ月」の期間はどのように計算しますか?2022年5月12日(木)にダブル公告(官報公告+日刊紙公告)をした場合を例に教えて下さい。

答:2022年5月13日(金)が起算日となり、(2022年6月12日は日曜日のため、その翌日である)6月13日(月)に満了します。(なお、ダブル公告(官報公告+日刊紙公告)をするには定款に日刊紙が公告方法として定められている必要があります。)

解説

会社法上の期間計算は民法139条から143条の規定に従うことになります(民法138条)。

まず、起算点について、民法140条により、日、週、月又は年によって期間を定めた時は、原則として期間の初日は算入せず(初日不算入)、翌日から起算します。ただし、例外的にその期間が午前0時から始まるときは初日も算入されることになります。なお、時間によって期間を定めた時は、その期間は即時から起算されます(民法139条)。

従って、2022年5月12日(木)より「1ヵ月」を債権者異議申述期間として定める場合は、「月」によって期間を定めたことになり、また、官報及び日刊紙公告は、午前0時に掲載公告されないため、初日(=掲載日)である5月12日(木)は算入されず5月13日(金)が起算日となります。

なお、通常、公告文には「本公告掲載の翌日から1箇月」と記載されますが、その場合、期間の初日は本公告掲載日(5月12日(木))の「翌日」(5月13日(金))となり、その午前0時から期間が始まるため、初日である5月13日(金)が参入され、5月13日(金)が起算日となるこから、結果として、前の段落の起算日と同じになります。

次に、満了点について、民法141条により、日、週、月又は年によって期間を定めた時は、その期間はその末日の終了(24時)をもって満了します。

そして、

①日を単位とする期間については、起算日から数えて最後の日が末日となり、

②週、月又は年を単位とする期間については、

 (i) その初めから計算するときは、最後の週、月又は年の末日が期間の末日となり、

 (ii) その初めから計算しないときは、その起算日に応当する日の前日が期間の末日となります(民法143条2項本文)。

なお、月又は年を単位とする場合に、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了します(民法143条2項但書)。

従って、2022年5月12日(木)から「1ヵ月」(又はその「翌日」から1ヵ月)を債権者異議申述期間として定め、5月12日(木)にダブル公告(官報公告+日刊紙公告)をした場合、期間は月の初めである5月1日ではなく、5月13日(金)から起算されることから、(民法143条2項本文が適用となり)その1か月後の応当日である6月13日(金)の前日である6月12日(日)が「1ヵ月」の期間の末日となり、(民法141条により)その終了(24時)をもって「1ヵ月」の期間は満了することになり「そうです」。

しかし、期間の満了点を特定する場合、民法142条に注意が必要です。

即ち、民法142条は、期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了すると定めています。

そのため、設問の例では、期間の末日となった2022年6月12日は「日曜日」であり、日曜日には取引をしない慣習があると考えられますので、「1ヵ月」の期間はその翌日である6月13日(月)に満了することになります。

その結果、2022年5月12日(木)にダブル公告(官報公告+日刊紙公告)をした場合、5月13日(金)が起算日となり、債権者異議申述期間は6月13日(月)に満了することになります。

このように、期間の末日が日曜日や祝祭日に該当する場合には期間満了日に注意する必要があります。

なお、「土曜日」にも民法142条が適用されるという見解もあるため、実務上は期間の末日が土曜日となる場合も民法142条が適用される前提でスケジュールを立てるのが安全です。